6月卓話事前資料

講師紹介

森田 創(もりた そう) 様

1974年5月 神奈川県生まれ

1999年3月 東京大学教養学部人文地理学科卒

1999年4月 東京急行電鉄株式会社入社
海外事業、社内ベンチャー制度によるフィルムコミッション事業立ち上げ、都心駅直結のミュージカル劇場(渋谷ヒカリエ内の東急シアターオーブ)の開業責任者、広報課長を歴任後、2019年4月日本初の観光型MaaS「Izuko(いずこ)」を伊豆で立ち上げる。
都市型MaaSの推進に加え、国内の第一人者として、全国各地の事例開発に携わった。

2021年秋 合同会社うさぎ企画を起業
関係人口および企業拠点の誘致、交流拠点設置やモビリティ設計など地方創生案件を、静岡県や長野県などで手掛ける。

会社員時代より著作者としても活躍しており、これまでの著書は以下3冊。

  • 洲崎球場のポール際 プロ野球の「聖地」に輝いた一瞬の光
  • 紀元2600年のテレビドラマ ブラウン管が映した時代の交差点
  • MaaS戦記 伊豆に未来の街を創る

現在の主な活動

人づくり(首都圏からの関係人口誘致)

焼津市役所「首都圏等複業人材マッチング事業」
上田市役所「市内企業活性化に向けた複業人材活用事業」

場づくり(関係人口×地元企業等との交流拠点の設置)

城ケ崎海岸「エクレアホール」の企画・改修・運営
静岡県地域づくりアドバイザー
焼津・漁具倉庫での複業人材×地元企業等の交流コンテンツプロデュース

足づくり(広域移動を促進するモビリティ環境の整備)

国土交通省「GP委員会」常任メンバー
富士山南東スマートフロンティア推進協議会 常任メンバ

企業経営支援(外部役員・顧問)

(株)東平商会
三島信用金庫
都内DX企業

Izukoについて

MaaSとは?

「Mobility as a Service」の略で、ICTを活用してマイカー以外の様々な交通手段を1つにつなぎ、スマートフォンなどで目的地までの最適な交通手段の選択や、目的地までの料金の決済ができる仕組み

MaaSへの取り組みはヨーロッパ(フィンランドやドイツ)で特に進んでおり、例えばフィンランドでは

  1. スマホアプリで目的地を選ぶ
  2. 電車/バス/タクシーなどを組み合わせたルートと料金が提示される
  3. 希望のルートを選んで決済、移動を開始する

といった仕組みが、月額定額料金モデルとして提供されているそう。

ちなみに国土交通省の説明は以下の通り

MaaS(マース:Mobility as a Service)とは、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスであり、観光や医療等の目的地における交通以外のサービス等との連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段となるものです。

Izukoとは

「伊豆を訪れる観光客に、スムーズな移動環境を提供することで、快適で楽しい伊豆体験をプレゼントする」をコンセプトに掲げたサービス。2019年4月から、フェーズ1〜3の実証実験が重ねられている。

推進団体:伊豆における観光型MaaS実証実験実行委員会

●会長
美しい伊豆創造センター

●委員長
東急、ジェイアール東日本企画

●副委員長
東日本旅客鉄道、楽天、伊豆急行

●委員
東海自動車、伊豆箱根鉄道、伊豆箱根バス、伊豆クルーズ、伊豆半島創造研究所、静岡県タクシー協会伊豆支部、JR東日本横浜支社、JR東日本レンタリース、静岡県町交通基板部・文化観光部

●アドバイザー
国土交通省中部運輸局静岡支局

実証実験 第1フェーズ

アプリ紹介ムービー

期間

2019年4月1日〜6月30日

展開エリア(デジタルフリーパス利用可能地域)

①イースト:東伊豆(伊東〜下田)
②ワイド:東伊豆+中伊豆(三島〜修善寺〜河津〜下田〜伊東)

主なサービス内容

スマホアプリをダウンロードして利用

①デジタルフリーパス(鉄道と路線バスが乗り放題、2日間有効、2種類)
②デジタルパス(観光施設の割引入場、7種類)
③下田市内オンデマンド乗合交通(乗車地点と目的地を選んでスマホ予約するジャンボタクシー、16の停留所、フェーズ1では無料)

結果

アプリのダウンロード数は伸びたが、機能開発が間に合わなかった部分もあり、フリーパス等の販売は伸び悩んだ。

アプリダウンロード数 23,231件
デジタルフリーパス販売数 726件
デジタルパス販売数 319件
オンデマンド交通利用(無料) 1,051件

 実証実験 第2フェーズ

ポスター

期間

2019年12月1日〜2020年3月10日

展開エリア(デジタルフリーパス利用可能地域)

①イースト:東伊豆(熱海〜下田)
②ワイド:東伊豆+中伊豆(三島〜修善寺〜河津〜下田〜伊東〜熱海)
③プチ:熱海〜伊豆高原
④グリーン:三島〜修善寺

主なサービス内容(フェーズ1からの変更点)

スマホアプリからWebブラウザでの利用に変更

①デジタルフリーパス(熱海周辺などエリア拡充、2→6種類に拡充)
②デジタルパス(7→14種類に拡充)
③下田市内オンデマンド乗合交通(停留所を16→27箇所に拡充、地元住民向けにTVでの予約システムを試験導入、1日400円に有料化)
④キャッシュレス観光体験(9メニュー)

結果

期間後半が新型コロナウイルス感染拡大時期と重なったため販売目標は未達に終わったが、国内観光型MaaSの事例の中では圧倒的な利用規模となった。

デジタルフリーパス販売数 2,733件(726件)
デジタルパス販売数 1,343件(319件)
オンデマンド交通 682件
キャッシュレス観光 363件

※カッコ書きはフェーズ1実績

実証実験 第3フェーズ

ポスター

期間

2020年11月16日〜2021年3月31日

展開エリア

主なサービス内容(フェーズ2からの変更点)

コロナ禍の生活様式の変更に伴うワーケーション層の急増を見据え、20代をメインターゲットとしたサービス開発が進められた

①デジタルフリーパス(エリア大幅拡充、6種類→16種類、1日フリーパスを追加)
②観光商品(観光体験や飲食など、21→125種類に大幅拡充)
③下田市内オンデマンド乗合交通(停留所に下田ベイクロシオなどの宿泊施設が追加)
④キャッシュレス拡充(クレジットカードに加えて、楽天ペイ・モバイルSuicaでの決済が可能に)
⑤画面上での施設混雑状況表示などの感染症対策への配慮

結果

12月末からの首都圏への緊急事態宣言発出や、それに伴う観光・宿泊施設の休業がかさなったため、チケットの総販売数は3,647(フェーズ2は5,121)と低迷した。

しかしながら、メインターゲットとしていた20代の利用割合がフェーズ2時よりも増加(20代女性8%→16%、20代男性11%→18%)。ワーケーション層の取り込みなど一定の成果を残した。

Izuko における苦労

スマホアプリかWebサービスか

※講師著書「MaaS戦記」に記載されているエピソードを要約

フェーズ1ではスマホアプリをダウンロードする形としていたが、

  • 年に1回来るかどうかの観光の目的に使うのであれば、わざわざアプリをダウンロードしてもらうより、Webブラウザでアクセスしてもらったほうがユーザーのストレスが少ない
  • Web形式のほうが改修や画面更新も容易なので、細かな修正などを繰り返す必要がある実証実験段階では都合が良い
  • アプリ開発のドイツの業者によるバグ修正などがなかなか進まなかった

などの理由から、フェーズ2以降ではWebブラウザ形式に切り替えが行われた。

地元交通業者との調整

※講師インタビュー記事より抜粋

ーMaaSの構築には関係者の巻き込みが不可欠かと思います。どのようにして進めていったのでしょうか?

一番苦労したのは、地元の交通事業者さまとの調整です。交通事業者さまからすれば、あらゆる乗り物がシームレスに利用できることは、脅威になる部分もあります。事業エリアや役割が決まっていて、線引きがはっきりなされていたからこそ、各社の利益とバランスが保たれていた背景がありますので。

そんな状況を乗り越えるには、MaaSの実現がいかに伊豆のためになるのかを少しずつ理解していただくしかありませんでした。

高い「スマホ」の壁

フェーズ1の際に下田文化会館会議室で開催された地元住民向け説明会。100人の来場者を見込んでいたが、集まった参加者はわずか15人。8割以上が65歳以上と見受けられ、Izukoのアプリを自力でダウンロードできたのはわずか4人だけだった。

フェーズ2の際に熱海駅で行われた販促イベント。Webブラウザ形式となりUIも格段に進歩したが、自力でユーザー登録を完了できるのは全体の3割しかいなかった。

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